目が合いましたね。
おっとあぶない。踏み潰すところでした。ぼくは、目をそらさずに見つめることにした。きみもずっと、こちらを見つめる。普段はきみに気がつくことも無く、通り過ぎていただろう。でも今日は違う。道路の真ん中にいるなんて危なすぎるよ。
ぼくが踏まなくても、誰かが踏むだろう。そう思って、さっと手に乗せる。きみは足をバタバタとさせて嫌がった。ぼくは階段でこれから何度も訪れるであろう、きみにとっての脅威から助けることにした。
今も活躍する東京の歩道橋は、あちらこちらからブルーのペンキが剥がれ落ちている。ここからの景色がすきだ。いつも上を、空を眺める。今日は曇りだったから、下を向いていた。だから君に気がついた。
通り過ぎようかと思った。でも、これは自分の仕事なんじゃないかと感じて、戻る。このままじゃいけない。安全な遊歩道まで運び、草木がある花壇で下ろした。
きみはそのあとぼくを見る事なく、草の中へ迷わず進んでいった